2014年07月21日

緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの逸脱への対応

質問番号:2014-02 緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの逸脱への対応

現在、当院ではSOP改訂作業を進めており、治験における緊急逸脱の手順について疑義が生じています。

緊急逸脱について、GCPガイダンス第46条4に、「・・・その際には、治験責任医師は、
逸脱又は変更の内容及び理由・・・・を可能な限り早急に治験依頼者並びに実施医
療機関の長及び実施医療機関の長を経由して治験審査委員会に提出してその承認を
得るとともに、実施医療機関の長の了承及び実施医療機関の長を経由して治験依頼
者の合意を文書で得ること。」とあります。

当院における実際の手順としては、緊急逸脱が起こった場合、治験責任医師から
病院長及び治験依頼者宛に「緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの
逸脱に関する報告書」が出されます。

病院長は、「治験審査依頼書」にて治験審査委員会に意見を求め、指示・決定を
「治験審査通知書」にて治験依頼者及び治験責任医師に通知します。

治験依頼者は、「緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの逸脱に関する通知書」
にて病院長宛に、検討結果を通知します。

【質問1】

「緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの逸脱に関する通知書」の
入手時期について、どのタイミングがふさわしいでしょうか?

GCPの記載からは、当該逸脱に対する治験審査委員会、治験依頼者の検討結果は
それぞれ独立しているように思えます。

しかし、治験審査委員会の前に「緊急の危険を回避するための治験実施計画書
からの逸脱に関する通知書」を入手し、治験審査委員会では治験依頼者の見解
も踏まえて当該逸脱の妥当性について検討するほうが現実的かと考えますが、
いかがでしょうか?


【質問2】

治験依頼者の検討結果が「合意できません」となった場合、その後の手順は
どのように想定されているのでしょうか。



<<製薬協の見解>>

【質問1】

GCP第46条ガイダンス4では、治験責任医師から提出された「緊急の危険を回避する
ための治験実施計画書からの逸脱に関する報告書」に対して治験審査委員会の承認、
実施医療機関の長の了承、治験依頼者の合意を得ることとされていますが、
治験依頼者の合意と治験審査委員会の承認及び実施医療機関の長の了承との順序
については明記されていません。

緊急の危険を回避するために行った逸脱は、被験者の安全及び人権保護が第一で
あるという見地から、治験審査委員会及び治験依頼者へ速やかに報告する必要があります。

逸脱によっては、治験依頼者の見解を待つことなく早急に治験審査委員会で審査
していただくことが必要な場合もあると考えます。

治験審査委員会による承認及び治験依頼者の合意のための検討は、それぞれの異
なる立場で行われます。前者は、被験者の緊急危険回避のために行った医療上や
むを得ないものであるとの治験責任医師による判断の妥当性を独立した立場から
審査するもので、後者は、治験責任医師の判断を当該治験全体に責任を有する者
として合意できるかどうかを検討するものです。

したがいまして、当該逸脱に関する治験審査委員会の審査と、治験依頼者からの
「緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの逸脱に関する通知書」の入
手とは別個に考えていただく必要があると考えます。

【質問2】

治験依頼者が合意しないということは、被験者の緊急危険回避であってもこの
ような逸脱を今後行うことができないということですので、代替危険回避方法
を含む再発防止措置、治験継続の可否等、その後の対応について治験依頼者と
治験責任医師において協議されるものと考えます



★その他の「治験119番」はこちら。
    ↓
http://www.jpma.or.jp/about/board/evaluation/tiken119/


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2014年07月18日

治験審査委員会の閉会(その1)

質問番号:2007-14 治験審査委員会の閉会(その1)

他施設の審査を受け入れているIRBが、委員の確保が困難等の理由で閉会する場合、他施設の実施中の治験についての取扱いはどのようになるのでしょうか?

今までに、そのような事例はございますでしょうか?

正当な理由があれば、別のIRBに途中から審査を依頼することは可能でしょうか?(「正当」にあたる理由には、他にどのようなケースが想定されますでしょうか?)

IC文書の改訂を含め、どのような手続か必要かもご教示いただけますと幸いです。




●●● 製薬協見解 ●●●

治験審査委員会(以下、IRB)の閉会により、当該IRBの審査を受けた治験実施医療機関(以下、実施医療機関)で実施中の治験は、以後、GCP第31条(継続審査等)に定められる審査を受けられないことになります。

この場合、GCPの目的である被験者の人権、安全及び福祉の保護、並びに治験の科学的な質と成績の信頼性を継続して確保するためも、他のIRBに審査を依頼することが以降の対応として適切であると考えられます。

その手続きとして以下の事項が考えられます。


@実施医療機関の長は、GCP第27条第1項ガイダンス1及び2の趣旨に従って、治験の開始から終了に至るまでの一貫性のある調査審議などを考慮し、適格なIRBを選定し、契約を締結する。


A 閉会となるIRBでのこれまでの当該治験に関わる審査関連資料(議事録等)を新たなIRBへ提供し、説明文書の改訂とともに、当該治験の審査を依頼する。


B 新たなIRBでは、過去の審議状況を踏まえた上で、当該治験の実施が適切であるかを審査していただく。当該IRBから意見があった場合には、必要な対応を行う。


C IRBが変更になった旨を被験者に連絡するとともに、新規被験者に対しては、改訂された説明文書にて説明を行う。



また、GCP第34条に定められるIRBに関わる記録の保存も以後必要です。

当該IRB閉会までの記録について、IRBの設置者と実施医療機関の長、必要に応じて治験依頼者も含めて事前に協議のうえ、保存場所、保存責任者を定め、移管することが必要です。

さらに、GCP第27条第1項第2号から第4号のIRBが調査審議の依頼を受ける場合のIRB設置者の要件として、GCP第27条第2項第6号「その他治験審査委員会の業務の公正かつ適正な遂行を損なうおそれがないこと」が掲げられており、その事項の一つには、「治験の開始から終了に至るまで、継続的に治験に関する調査審議を行う体制を整えていること」(GCP第27条第2項ガイダンス5(8))と規定されています。

したがいまして、今回の閉会及び委託先IRBの選定にあたり、「実施医療機関の長は、治験審査委員会に関する必要な情報を入手するなどして、治験の開始から終了に至るまで一貫性のある調査審議を行うことができる治験審査委員会を選択し、調査審議の依頼を行うこと」(GCP第27条第1項ガイダンス2)を説明する書面を作成することが、実施医療機関の長にとって必要であると考えます。

なお、上記は日本製薬工業協会としての見解ですが、本件は及ぼす影響が大きいため、必要な対応等について規制当局に相談することをお奨めします。


以上

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2014年07月15日

治験審査委員会成立要件における医師である委員の出席の要否

質問番号:2007-13 治験審査委員会成立要件における医師である委員の出席の要否

ある実施医療機関において施設SOPに則り会議の成立を宣誓し治験審査委員会を開催しました。審議案件は、

@プロトコール等軽微な変更

A安全性報告に関する審議

- 海外での安全性情報の追加報告2件(既に前IRBにて承認済み)

- 海外での安全性情報の取り下げ報告1件

- 国内での安全性情報の新規報告2件(薬剤の作用に伴う想定できる範疇の事象)


当審査委員会の構成メンバーは、医師3名(外部)、薬剤師1名、看護師1名、事務職他3名(1名外部)である。

その内出席者は、医師0名(急遽欠席)、薬剤師1名、看護師1名、事務職他3名の計5名。


審議案件は治験責任医師と担当モニター両名により行われ、急な医師欠席であったがSOP並びにGCPから判断し会議の成立は妥当であるとの事より会議開催となった。

依頼者の見解:不成立(事由:安全性報告に関する審議であるにも関わらず、医師不在下での成立は認められない)


病院の見解:成立

@GCP並びにSOPの観点より会の成立は妥当である。

A自然科学系の専門家2名(薬剤師、看護師)の立会いは安全性の審議上不成立と断定するには委員の背景等検討せず断定するのは疑問である。

職名のみでの成立、不成立の可否判断は、逆に不当である。

B医師不在下である点より自然科学系の専門家並びにその他出席委員と治験責任医師との質疑応答を踏まえての審議であり、医師不在下であっても安全性の報告審議に関し不成立と断定するのはややオーバークオリティの感もあるのではないか。




●●● 製薬協見解 ●●●


治験審査委員会の構成については、GCP第28条第1項ガイダンス1において、「治験審査委員会は、治験について倫理的、科学的及び医学的・薬学的観点から審議及び評価するのに必要な資格及び経験を、委員会全体として保持できる適切な数の委員により構成するものとし、次に掲げる条件をすべて満たしていること」と規定されています。


ご質問の背景としまして、治験審査委員会委員として指名されていました3名の医師が全て欠席され、開催及び審議されたとのことですが、このような場合、「治験審査委員会の運営の不備(治験の継続の適否の審議及び採決に医師が参加していなかったこと等)」とPMDAに判断された例があります。

したがいまして、次回の治験審査委員会にて、今回の審議結果に対する再審議を行われることをお勧めいたします。


なお、ご質問中に「審議案件は治験責任医師と担当モニター両名により行われ」、また、「自然科学系の専門家並びにその他出席委員と治験責任医師との質疑応答を踏まえての審議」とのご記載がありますが、治験責任医師はあくまで情報を提供する立場であり、審議及び採決には参加できない(GCP第29条第1項ガイダンス6)ことにご留意下さい。


以上
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2014年07月13日

治験審査委員会委員の適格性

質問番号:2007-12 治験審査委員会委員の適格性


新規治験を依頼する上で、治験審査委員会の構成についてお尋ねします。

治験依頼予定の医療機関(クリニック)には治験審査委員会が組織されているのですが、その委員長が医療機関の長の妻ということで公平な審査ができるのかという部分で疑問があります。

治験責任医師候補でもある医療機関の長は生活を共にすることと、治験の審議は切り分けて考えているので問題はないと主張されているのですが、GCP上の問題はありますでしょうか。

なお、この治験審査委員会の医師は委員長一人であり、採決に不参加とすると医師はいなくなることになります。



●●● 製薬協見解 ●●●

ご質問の内容は、治験責任医師(=実施医療機関の長)の配偶者が、治験審査委員会の委員(委員長)として選任されているというケースですが、審議及び採決に参加することができないと規定されているGCP第29条第1項第1号〜第3号には該当していません。

さらに、GCP第29条第1項ガイダンス1では、「治験責任医師と関係のある委員は、治験審査委員会における当該治験に関する事項の審議及び採決に参加してはならない」と補足されていますが、この「関係のある」ということに対して、ご質問のケースが該当するか否かについて具体的なことまで解説されていません。


治験責任医師の配偶者であるという点だけをもって、GCP上、不適切な委員であると断定することはできませんが、当該委員長が独立した立場で院長に意見を言うことができるか否かを個々に判断する必要があると思われます。

なお、GCP第28条第1項にて治験審査委員会の要件として「治験について倫理的及び科学的観点から十分に審議を行うことができること」、また、GCP第28条第1項ガイダンス10にて「治験審査委員会は、委員以外の特別な分野の専門家に出席を求め、その協力を得ることができる」との規定があります。

当該治験審査委員会の構成として、医師の資格を有する委員が1名であることに対する実施医療機関の長(治験審査委員会の設置者)の見解を確認するとともに、委員の追加又は委員以外の専門家への協力要請を提案する等の対応を行っておくことも大切かと考えられます。


以上
posted by ホーライ at 21:40| Comment(0) | TrackBack(0) | IRB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

治験終了報告書の提出時期(その2)

質問番号:2014-01 治験終了報告書の提出時期(その2)

治験119見解2007-22に、終了報告書に記載できる内容がそろっていれば、
CRF回収前であっても終了報告書を提出できる旨の回答がございます。

これに似たような内容のご質問ですが、CRFの回収、治験薬回収は完了しており、
必須保管文書の確認のみがまだである状態で、終了報告書を先に提出し、
終了報告書提出後に必須保管文書の確認をしても差し付けないと考えますが、いかがでしょうか?

必須保管文書の確認がない時点でも、実施状況については記載できるため、
終了報告書は提出可能と考えます。ご見解をお教え頂けますと幸いです。




<<製薬協の見解>>

GCPでは、実施医療機関での治験終了報告の時期とモニターによる保存文書の確認
(保存状況の確認)時期との関係については規定されていません。

治験終了報告書は、実施医療機関における治験(投薬、観察等)が終了したことを
治験責任医師が医療機関の長に報告するものです。

実施医療機関でのモニターによる保存状況の確認は、治験責任医師による治験
の終了報告までに終了しておくことが望ましいとは思われますが、治験終了報告後に
実施されることでもGCP上問題はありません。

なお、過去の見解2007-22の他、2007-16及び2009-42もご参照下さい。



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2014年07月11日

治験実施計画書からの逸脱記録が必要な範囲(その1)

質問番号:2007-11 治験実施計画書からの逸脱記録が必要な範囲(その1)


治験薬を1日2回朝夕食後、1年間服用する治験があります。

治験依頼者より、1回でも治験薬を飲み忘れた場合は、逸脱として扱い、逸脱報告書を提出するよう言われました。

治験依頼者の見解は、治験実施計画書中に明確に逸脱としないことを宣言していない事柄については、逸脱とすべきであるとの観点から、1回でも飲み忘れた場合は逸脱扱いとするそうです。


他の治験の場合ですと、治験実施計画書に記載されていない場合でも、治験薬服薬率が80%以上であれば逸脱としないなど、治験依頼者によって対応が異なります。

1回でも飲み忘れた場合、逸脱報告書を記載することが本当に必要なのでしょうか。

本当に必要なものなのかどうかよくわからないため、教えていただけますと幸いです。





●●● 製薬協見解 ●●●

GCP第46条ガイダンス2に、「治験責任医師又は治験分担医師は、治験実施計画書から逸脱した行為を理由のいかんによらず全て記録しておくこと。

治験責任医師は、逸脱した行為のうち被験者の緊急の危険を回避するためその他医療上やむを得ない理由により治験実施計画書に従わなかったものについてのみ、その理由を記録した文書を作成し、直ちに治験依頼者及び実施医療機関の長に提出すること」とあります。


治験薬の飲み忘れは、緊急の危険回避には該当しないと思われますので、逸脱報告書の提出は不要と考えます。

ただし、服薬率に対する逸脱の考え方については、対象疾患、薬物の用法用量や体内動態によって薬効評価への影響が大きく変わることから一律に論じることはできません。

そのため、治験依頼者は治験毎に治験実施計画書等で服薬遵守率に対する逸脱の取扱いを規定しています。

この規定によっては、たとえ1回の飲み忘れであっても、逸脱として取扱う場合があり、その場合は逸脱した事実がわかるように記録しておくことが必要になります。

したがいまして、治験依頼者との事前の文書による合意がない場合には、上記を考慮の上、逸脱として取扱うか否かを治験依頼者と協議することをお奨めします。


以上
posted by ホーライ at 02:30| Comment(0) | TrackBack(0) | プロトコルからの逸脱 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月09日

非専門家委員(治験審査委員会)を複数名指名している場合の両名出席の要否

質問番号:2007-10 非専門家委員(治験審査委員会)を複数名指名している場合の両名出席の要否

治験審査委員会の構成としてGCP28条3)の委員は2名が指名されています。

会議の成立要件を満たすため必ず1名は出席できるようにとの配慮から複数名指名している委員会がほとんどだと思います。

ただ、少なくとも1名は出席ということから、他は1名が出席できないときの代理という考えを持たれている場合、どのように正したらよいのでしょうか。


継続した調査審議は委員会というより、出席した委員のことも含めていると思います。

委員会で毎回、同じ委員が欠席している、ただし、会議の成立要件は満たしている場合、実地調査でも指摘を受けるかなと思いますが・・・。

そのような事例はご存知でしょうか。



●●● 製薬協見解 ●●●

治験審査委員会(以下、IRB)において、GCP第28条第1項第3号の委員(以下、非専門委員)を2名指名されています背景としまして、「会議の成立要件を満たすため、必ず1名は出席できるようにとの配慮」ということですが、GCP第28条第1項ガイダンス3に「委員構成を適正な割合に保つことが必要である」と規定されています。

そのため、IRB委員の全人数に対する第3号、第4号又は第5号の委員の割合がガイダンスに沿っているかどうかご確認下さい。

もし、専門委員の割合が著しく高い場合には、2名の非専門会員の出席を必須とすべく、成立要件を変更することをご検討下さい。

なお、非専門委員1名の出席でも委員構成(割合)が適正と判断できる場合には、現状の1名のみの出席でもGCP上問題はありません。

また、代理の委員の方にも経験、スキルアップのため可能な限り出席して頂くことをご検討されてはいかがでしょうか。


初回審査時の委員と全く同じ委員が、継続審査を行わなければならないとの規定は、GCPにありません。

委員の改選等により、初回審査時の委員が変更になっても、IRBとして同一の基準で審査されていれば問題ないと考えられます。



以上

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2014年07月07日

治験責任医師による治験契約書の確認の記録

質問番号:2013-65 治験責任医師による治験契約書の確認の記録

治験契約書に治験責任医師の確認署名が不要となりましたが、確認いただいたことの記録をどこかに残していないと問題になりますでしょうか?

弊社では,契約書の写しに署名いただくか、いただけないときはその協議記録をモニタリング報告書に残すよう取り決められています。


<<製薬協の見解>>

「治験責任医師は契約書の内容を確認するが、必ずしも署名等は必要としない。」(GCP第13条第1項ガイダンス1)と規定されていますが、この確認について具体的な手順等はGCPでは規定されておりません。

治験責任医師が契約書の内容を確認したことの担保として、契約書の写しを治験責任医師ファイルに保管しておく等、何らかの記録を残しておくことをお勧めします。


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2014年07月03日

関連医療機関2施設で一つの治験を実施する場合の契約

質問番号:2007-08 関連医療機関2施設で一つの治験を実施する場合の契約


「外来専門のクリニック」を併設している医療機関とどのように契約を結ぶべきか、ご意見をいただきたくご連絡差し上げました。

ある医療機関では、外来と入院をそれぞれ別名の医療機関(仮に、A病院とBクリニックとします)として経営しています。

外来で診察に来る患者様は、まずBクリニックで診察を受けます(Bクリニックは外来専門のクリニックで、A病院と併設されています)。

入院が必要な場合は、A病院へと転院していただき、以降はA病院にて治療を受けます。

外来の患者様は、初めからA病院に行く事はなく、まずBクリニックを経由してからA病院へと転院される流れとなっています。

A病院とBクリニックは、電子カルテを共有しており、双方からカルテや検査結果などを閲覧できるようになっています。

そこで、「入院の治験」をこの医療機関で行いたい場合、

• A病院と治験依頼者の二者契約

• A病院とBクリニックと治験依頼者の三者契約

のいずれの形態が適当なのでしょうか?


Bクリニックでは、以下の業務を行います。

• 対象疾患かどうかを診断するための検査

• 対象疾患かどうかの診断

• 適格性確認(適格性のある患者様にのみ、治験の説明を行うため)

• 治験概要の説明(同意説明文書は用いず、簡単な口頭による紹介のみ)


Bクリニックで紹介を受けた患者様は、A病院へ転院され改めて、「同意説明」「同意取得」という流れで治験に組み入れられます。

Bクリニックでは、同意説明・取得は行っていませんが、適格性確認のための検査データはBクリニックに残されており、モニターがSDVを行う際は、Bクリニックの電子カルテを参照することとなります。

このため、二者契約ではなく三者契約とし、Bクリニックも契約上治験に参加していることを明記すべきでしょうか?

しかし、その一方で、治験薬の搬入はA病院のみであり、実質的な治験の開始(同意取得)もA病院で行われます。

もし三者契約とすると、スクリーニングのみを担うBクリニックが治験実施医療機関として治験届に記載されなければならず、施設選定や安全性報告等の業務が二つの医療機関に対して二重に発生してしまいます。

上記のようなケースは、いくつかの医療機関で報告されております。

GCP上、クリティカルな問題とはならないかもしれませんが、ご意見をいただければと存じます。




●●● 製薬協見解 ●●●

A病院とBクリニック間での検査機器、測定方法等の違いが、治験実施計画書に抵触しないとの前提で、ご質問にお答えします。

同意取得から治験薬の投与をA病院で行うことから、A病院が治験実施医療機関となります。

しかし、Bクリニックも当該治験に関与していますので、Bクリニックに来られた患者さんがA病院で治験に参加することの妥当性について治験審査委員会で審査されるとともに、以下のような対応を行う必要があると考えられます。

@Bクリニックで実施する検査が、日常診療の範囲内として行うことができない検査を実施する場合には、当該検査は治験のための行為であり、Bクリニックでの検査実施前に文書による同意を取得する必要があります(GCP第50条)。

Bクリニックでも治験行為を実施することになりますので、治験実施医療機関として治験届への記載、治験依頼者との契約が必要となります。


ABクリニックで実施する検査が、日常診療の範囲内として行われる検査である場合には、Bクリニックは治験実施医療機関とはなりません。

しかし、そのような場合でも、以下の点については留意/対応しておく必要があります。

・Bクリニックで実施された検査の結果が治験データとして用いられること、及び治験依頼者等が当該Bクリニックのデータを直接閲覧することが説明文書に記載されていること。

・被験者の適格性確認は、(A病院の)治験責任医師及び治験分担医師の責任であること(GCP第44条)。

・Bクリニックで実施された検査に関する原資料が、GCP第41条第2項で定める期間保存されること。

・電子カルテ情報がA病院とBクリニックで共有されており、Bクリニックでの検査結果は、A病院と治験依頼者の二者契約では直接閲覧を行うことはできないため、Bクリニックも含めた三者契約を締結すること。



契約については、直接閲覧以外にも、原資料の保存、守秘義務、治験依頼者のモニタリング・監査、治験審査委員会及び規制当局の調査を受け入れる旨、健康被害補償(侵襲的検査を実施する場合)、費用の負担などに関する項目を盛り込むべきと考えられます。

なお、以上のような煩雑な手順等による被験者をはじめとした関係者の負担を最小限にするためにも、最初の検査からA病院で実施することを再度検討されてはいかがでしょうか。



以上
posted by ホーライ at 04:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 治験の契約 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月02日

生活保護受給者の治験参加

質問番号:2007-07 生活保護受給者の治験参加

生活保護者の治験参加の場合には、負担軽減費や特療費(保険外併用療養費)等について保険事務所とよく相談しなけらばならないということは聞いたことがあるのですが、実際にその経験をしたことがありません。

もしそのような場合には、具体的にどのようなことに注意すべきでしょうか。




●●● 製薬協見解 ●●●

生活保護受給者が治験へ参加される場合は、社会的弱者への配慮及び生活保護制度への影響を検討する必要があります。

社会的弱者への配慮については、主に治験審査委員会で審査することになります(GCP第32条第1項/第2項ガイダンス1)。

また、生活保護制度への影響については、負担軽減費を受け取ることによって、生活保護の適応除外又は保護費減額の事由になり得ますし、保険外併用療養費制度は原則として適用できません(生活保護法第52条第2項)。

これらの点につきまして、生活保護受給者を管轄する福祉事務所への問い合わせが必要です。

福祉事務所に対して予定される支払い費用を説明すると共に、院内並びに被験者と調整を図り、生活保護受給額に影響がでる可能性があることを説明した上で、被験者にとって最も望ましい対応をとることが重要と考えます。


以上
posted by ホーライ at 02:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 被験者に関して | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする