2014年06月24日

併用薬である市販品の副作用報告義務(その2)

質問番号:2007-02 併用薬である市販品の副作用報告義務(その2)

治験119公式見解集質問番号2005-06に記載されたQ&Aですが、

「治験薬の併用薬による重篤でない有害事象がSDVで発見された結果、当該併用薬のメーカーMRより当該有害事象に関する報告書の提出を求められたが、SDVで知り得た情報の漏洩ではないか」という質問に対して、製薬協見解では、製薬企業としては適切な対応であるとされていますが、以下の点につきましてご教授戴きたくお願い申し上げます。


@ SDVは医療法等を越えたGCPに基づく治験のための規定である。


A モニターは特別に指名された治験業務の担当者であり、モニターとしては他の業務を兼務できない。


B このモニターによるSDVで入手した情報を一般の情報として流用可能なら、特別にSDVに関する治験依頼者・治験実施医療機関等間の契約等は不要ではないか。


C このような情報の流れが治験依頼者(CROかも)のSOPに規定されているということは考えられるのか。


D 以上の4点から上記の医療機関?(或は医師)からの質問は当該メーカーによるSDVで知り得た情報の漏洩に当るのではないか。




●●● 製薬協見解 ●●●

@ SDVにつきましては、薬事法に基づく厚生省令第28号(GCP省令)において、モニターの責務として規定されているものであり、医療法等、他の法規との間に軽重はないと考えております。


A モニターの要件につきましては、GCP第21条第1項ガイダンス2に則り、各社のモニタリングに関する手順書等にて規定されるものですが、他の業務との兼務の可否についてはGCPで規定されておりません。


B SDVについての契約は、GCP第13条に基づくもので、原資料の閲覧について実施医療機関側が了承していることを契約条項として確認するものです。


C 実施医療機関での治験に関わる安全性情報については、モニターが収集し、治験依頼者として必要な対応を行うことになります。

このような安全性情報の取り扱いと対応方法については、薬事法関連法規に基づいて、通常各社のSOPにて規定されています。


D SDVにおいてモニターが自社の併用薬での有害事象を知り得た場合には、当該企業が薬事法施行規則第253条並びにGVP省令(医薬品の製造販売後安全管理業務に関する基準)に基づく副作用等報告の責務を有する旨を説明の上で、治験責任医師に併用薬の副作用情報収集への協力を依頼し、了解を得た上で、通常は製造販売後安全管理部門を通じ、担当MRが情報収集にあたるという手順が踏まれます。

モニターには、職務上知り得た被験者の秘密に関する守秘義務が課せられています(薬事法第80条の2)ので、上記のような情報の流れにおいても、氏名等の被験者個人を識別できる情報は用いられません。

情報の使途が関連法規に則った規制当局への報告に限局したものであり、被験者個人の秘密も保護されますので、情報の漏洩には当たらないと考えます。


以前の公式見解にも記載しました通り、製薬企業が自社の市販薬に対する副作用の発現を知った場合には、必ず収集する義務がありますので、お手数ですがそのような場合にはご協力下さいますようお願いします


以上


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2014年06月15日

併用薬である市販品の副作用報告義務(その1)

質問番号:2005-06 併用薬である市販品の副作用報告義務(その1)

ある症例で、治験薬とは因果関係のない、重篤でない有害事象が発生しました。

この症例は、G社のすでに市販されている医薬品を併用されていたため、後日、その市販薬と有害事象の因果関係を求める報告書の提出を求められました。
(治験の症例報告書とは別物です)


これは、MRがすべき医薬品情報収集の一環とのことで、これをしないと規制当局から、お叱りを受け、依頼者のSOPにも書かれているとのことです。

(まだ入手していませんが、自社製品の報告すべき副作用であるなら、施設から厚労省へ報告するようお願い(依頼)され、報告する・しないを施設で判断するなら別ですが、当然のように報告の提出をもとめるのは、SDVで知り得た情報の2次利用、言い換えれば他部門に漏洩しているということになると思うのですが。

いかがでしょうか。






●●● 製薬協見解 ●●●


ご存知のように治験薬の副作用及び有害事象の情報収集はGCPに従って治験のモニターが収集します。

これに対し、市販品に関して、製造販売業者は、薬事法第77条の3の1において、適正使用情報の収集に努め、同77条の3の2において、医療関係者は製造販売業者の情報収集に協力するよう努めるとされております。


通常、この収集業務はMRが担当しておりますが、MRに限ったものではありません。

製薬企業に従事する者全員に課せられたものと理解しております。

治験のモニターがSDV中に発見した市販薬の副作用を担当MRに連絡し、MRが市販薬の情報収集に当たることはSDVで知りえた情報の他部門への漏洩ではなく、製薬企業として適切に対応していると考えます。

市販薬の副作用に関して情報を収集する場合も手順に定められた様式を使用する必要がありますので、CRFとは別に副作用の報告書の提出をお願いしたと思います。

製薬企業が自社の市販薬に対する副作用の発現を知った場合には、必ず収集する義務がありますので、お手数ですがそのような場合にはご協力くださるようお願いします。

なお、医療機関によっては市販薬の副作用に関する詳細な報告書の作成は受託研究として契約を必要とするところもありますので、貴施設がそれに該当するかどうか事務担当者にご確認ください。


以上

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2014年05月25日

治験薬安全性情報の提供の開始日

質問番号:2013-59 治験薬安全性情報の提供の開始日

治験依頼者による治験責任医師への安全性情報の報告は、下記の何れの日から発生するのでしょうか?

ある治験依頼者からは、治験責任医師と治験依頼者との治験実施計画書の合意日から発生すると言われました。

1. 治験の合意日

2. 治験の依頼日

3. 治験の契約日




<<製薬協の見解>>

安全性情報を提供する目的は、契約締結前後で少々異なります。

契約締結前に安全性情報を提供する目的は、治験責任医師となるべき者へ治験実施計画書の合意に必要な情報を提供することと、被験者への説明文書の作成に必要な情報を提供することにあります(GCPガイダンス第7条第4項/第5項1、第9条1)

ただし、契約締結前の安全性情報の提供時期まではGCPで規定していませんので、起点が合意日、依頼日のいずれでも、提供の目的が達成されるのであれば問題ではありません。

治験依頼者によって提供時期に多少の差異があるかと思いますので、個別に確認されることをお勧めします。


★その他の「治験119番」はこちら。
    ↓
http://www.jpma.or.jp/about/board/evaluation/tiken119/
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2014年05月18日

契約期間終了後の有害事象の追跡調査に対する契約の必要性

質問番号:(6) 契約期間終了後の有害事象の追跡調査に対する契約の必要性

契約(研究)期間終了後の追跡調査に関し、新たな(あるいは継続)契約が必要か否かについて 本年3月31日に終了した(=契約書の研究期間)治験について、3月末の最終検査で有害事象(検査値の異常変動)が発現したため、治験実施計画書に従い追跡調査を実施していただいた。

これについて、治験事務局は契約が必要か否か判断できないため、治験依頼者が不要と考えるのであればその根拠(見解)を示せとのことであった。

そこで、会社法務部門の了解を得て提出しようとしたところ、治験依頼者の私的見解ではなく、当局あるいは製薬協などがどのように考えているか確認し、示して欲しいとのことであった。

治験事務局に他に事例(経験)はないかお伺いしましたが、他は、追跡調査を網羅する契約を予め締結しており(?)、本件のような事例は初めてとのこと。

なお、現時点で既に追跡調査は実施済みであり、回答は早急(5月末位)に必要なため、契約を不要とする根拠を探すよりも、追跡調査のために新たな契約を締結した方が話しは早いと考え、4月1日以降の追跡調査実施の正当性を確保(網羅)する契約を現時点で締結する方向で考えております。




<< 製薬協の見解 >>

治験契約書で取決められる「治験の期間」は、通常、当該実施医療機関において、治験実施計画書で規定される治験薬の投与又は検査・観察が全て終了されるまでの期間をさして扱われていますが、もちろん法的な裏付けがあるわけでありません。

このため、まずは、契約の当事者間において「治験の期間」の認識を共通のものにするため、あらかじめ、両者で十分に話し合っておく必要があります。

さて、有害事象発現症例に対する追跡調査については、GCPの規定に沿って、

(1) その必要性が治験実施計画書で規定されている

(2) 原契約において「治験実施計画書を遵守した治験の実施の必要性(GCP第13条1項13号)」と「被験者に対する健康被害補償の取り扱い(GCP同条同項第16号)」が規定されているといった措置がとられているはずです。

すなわち、たとえ、有害事象発現症例に対する追跡調査の実施時期が「治験の期間」の枠外となったとしても、その実施が契約上担保されているといえますので、特段の不都合が生じるとは考えられません。

従って、治験契約を更新等の手続きは、一般的には、必ずしも必要ないと考えられます。

なお、同様のことは、「記録の保存(GCP同条同項9号)」、「被験者の秘密の保全(GCP同条同項11号)」、「治験依頼者の求めに応じた実施医療機関の原資料等の閲覧への協力(GCP同条同項14号)」等の契約事項についてもいえます。



★その他の「治験119番」はこちら。
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http://www.jpma.or.jp/about/board/evaluation/tiken119/
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2014年05月11日

治験薬安全性情報の提供の開始日

質問番号:2013-59 治験薬安全性情報の提供の開始日

治験依頼者による治験責任医師への安全性情報の報告は、下記の何れの日から発生するのでしょうか?

ある治験依頼者からは、治験責任医師と治験依頼者との治験実施計画書の合意日から発生すると言われました。

1. 治験の合意日

2. 治験の依頼日

3. 治験の契約日




<< 製薬協の見解 >>

安全性情報を提供する目的は、契約締結前後で少々異なります。

契約締結前に安全性情報を提供する目的は、治験責任医師となるべき者へ治験実施計画書の合意に必要な情報を提供することと、被験者への説明文書の作成に必要な情報を提供することにあります(GCPガイダンス第7条第4項/第5項1、第9条1)

ただし、契約締結前の安全性情報の提供時期まではGCPで規定していませんので、起点が合意日、依頼日のいずれでも、提供の目的が達成されるのであれば問題ではありません。

治験依頼者によって提供時期に多少の差異があるかと思いますので、個別に確認されることをお勧めします。



★その他の「治験119番」はこちら。
    ↓
http://www.jpma.or.jp/about/board/evaluation/tiken119/


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2014年04月12日

治験依頼者による安全性情報提供の終了時期(その1)

質問番号:(8) 治験依頼者による安全性情報提供の終了時期(その1)

当院では、受託研究の終了報告書が提出されるまでを、安全性情報の報告受理の期限としております。

実際には治験自体は終了しているにもかかわらず、終了報告書が未提出の場合には、安全性報告を事務局で受理し対応しています。

事務局の業務として、かなり時間をさいている状況なので、例えば、契約終了までとか、別の期間を設定できるのではないかとも、考えております。

受理の期限がいつまでなのか、明確に記載されているものを、見たことがないのですが、何か規定されているものはありますでしょうか?

新GCP上、いつまでが妥当なのか、見解を示していただけたらと存じます。




●製薬協見解

GCP第20条によると、治験依頼者は被験薬に関する副作用情報等(以下、「安全性情報」)を治験責任医師や実施医療機関の長に通知、提供しなければなりません。

しかし、その安全性情報をいつまで継続的に提供しなければならないかについてはどこにも規定されておりません。

このため、その取扱いについては治験依頼者によって少なからず差異が見られるかもしれません。

しかし、GCP第20条の趣旨は、治験依頼者が治験責任医師等や実施医療機関の長に最新の安全性情報を提供し、治験期間中の被験者の安全性確保に細心の注意を払っていただくことによって、被験薬による健康被害の拡大を未然に防ごうとすることにあります。

このため、治験依頼者は、少なくとも治験実施計画書で規定される投与及び観察が終了するまで安全性情報を継続提供すべきと考えています。

従って、それ以降の安全性情報の要否は、各実施医療機関でご判断いただければよいと考えています。


【見解改訂理由】

以前は安全性情報の提出は終了報告書が提出されるまで必要であるとの見解でしたが、同様の質問が寄せられたのを機に、本見解を治験119で再検討しました。

その結果、検査・観察の終了以降は安全性情報が実施医療機関に提出されなくとも被験者の安全性確保には大きくは影響しないとの結論に達したために、見解を改訂しました。


■■■ 【関連するGCP条文】 ■■■

(副作用情報等)

第20条

治験依頼者は、被験薬の品質、有効性及び安全性に関する事項その他の治験を適正に行うために必要な情報を収集し、及び検討するとともに、実施医療機関の長に対し、これを提供しなければならない。

2 治験依頼者は、被験薬について法第80条の2第6項に規定する事項を知ったときは、その発現症例一覧等を当該被験薬ごとに、当該被験薬について初めて治験の計画を届け出た日等から起算して1年ごとに、その期間の満了後3月以内に治験責任医師及び実施医療機関の長に通知しなければならない。

3 治験依頼者は、前項に規定する事項のうち当該被験薬の治験薬概要書から予測できないものを知ったときは、直ちにその旨を治験責任医師及び実施医療機関の長に通知しなければならない。

4 治験依頼者は、被験薬の品質、有効性及び安全性に関する事項その他の治験を適正に行うために重要な情報を知ったときは、必要に応じ、治験実施計画書及び治験薬概要書を改訂しなければならない。この場合において、治験実施計画書の改訂について治験責任医師の同意を得なければならない。


以上

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2014年04月06日

予定手術のための入院に対するSAE報告の取扱い(その2)

質問番号:2013-54 予定手術のための入院に対するSAE報告の取扱い(その2)

治験期間中に被験者が骨折され、治療のために入院され、その旨SAEとして報告させていただきました。

退院時に転帰を「回復」にして、SAE報告書を終了しました。

10か月後、骨折内固定術用のボルトを抜去するため再度入院されました。

治験依頼者側からは、ボルト抜去のための入院は前回入院時から予定されていた入院であるため、SAEではなくAEとして挙げてよいとの見解でした。

治験開始前から予定されていた治療入院はSAEに該当しないとわかりますが、治験開始後に、1回目の入院で予定された2回目の入院はSAEとして挙げなくてもよいでしょうか?

また、今回のボルト抜去のための入院はどのように対応したらよいでしょうか?





<< 製薬協の見解 >>

有害事象とすべき事象やその報告方法に関しては、治験実施計画書に別途定められていたり、企業毎に取り扱いが定められている場合がありますので、治験依頼者と協議のうえ対応されることをお勧めします。

なお、一般的には骨折の治療として施されたボルト植込み・抜去は一連の処置であり、症状の再発または増悪がなく予め計画されたとおり抜去のためだけに入院された場合は、当該(ボルト抜去のための)入院が治験開始後に決められたものであっても、新たに発現した重篤な有害事象/有害事象のいずれにも該当しないものと考えられます。

この場合においては、ボルト植込みのための入院時の重篤な有害事象の報告に対する追加報としてあげることが考えられます。



【関連するGCP】

(治験中の副作用等報告)

第48条

治験責任医師は、治験の実施状況の概要を適宜実施医療機関の長に文書により報告しなければならない。

2 治験依頼者が治験を依頼する場合にあっては、治験責任医師は、治験薬の副作用によると疑われる死亡その他の重篤な有害事象の発生を認めたときは、直ちに実施医療機関の長に報告するとともに、治験依頼者に通知しなければならない。

この場合において、治験依頼者、実施医療機関の長又は治験審査委員会等から更に必要な情報の提供を求められたときは、当該治験責任医師はこれに応じなければならない。

3 自ら治験を実施する者が治験を実施する場合にあっては、治験責任医師は、治験薬の副作用によると疑われる死亡その他の重篤な有害事象の発生を認めたときは、直ちに実施医療機関の長(一つの実施計画書に基づき共同で複数の実施医療機関において治験を実施する場合には他の実施医療機関の治験責任医師を含む。)に報告するとともに、治験薬提供者に通知しなければならない。

この場合において、治験薬提供者、実施医療機関の長又は治験審査委員会等から更に必要な情報の提供を求められたときは、当該治験責任医師はこれに応じなければならない。


★その他の「治験119番」はこちら。
    ↓
http://www.jpma.or.jp/about/board/evaluation/tiken119/
posted by ホーライ at 01:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 副作用等報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする